“じゃないほう”の曲が「未来のために」だった
―池森さんが作詞作曲を手掛けた、メンバー主導のシングルが初めて世に出たのはデビューから2年後でした。1995年に、『劇空間プロ野球』のイメージソングになったその曲、「未来のために」を聴いて、当時の千葉ロッテマリーンズのボビー・バレンタイン監督がDEENの大ファンになり、2度目の監督就任後の2006年、千葉ロッテマリーンズの公式イメージソングをDEENに依頼するということにも繋がりました。
池森:そんなこともありましたね。でも、「未来のために」にはその前段の逸話があるんですよ。当時、読売ジャイアンツの監督は長嶋茂雄さんで、制作途中のデモ音源を「次の『劇空間プロ野球』の曲、こんな感じでどうですか?」と聴いていただく機会があったんですね。
ひとつは、その時点でほぼ決まりかけていた歌入りのデモ。もうひとつは、1曲だけお聴かせするのでは失礼だろうと、急遽用意したシンセの仮メロ入りのストック曲で。結果、長嶋さんが「こっちが良いんじゃない?」と選んだのは後者の曲でした。その意外すぎる展開に僕らは「えーっ⁉」となりつつ、「長嶋さんがそうおっしゃるならそっちだよね」と、“じゃないほう”の曲を急いで仕上げた。それが「未来のために」だったんです。
音楽をやっている人だったら、シンセの仮メロのデモ音源から全体像や完成図を想像できるけど、一般的には、歌詞がちゃんとある、歌が入っているほうを選ぶと思うんです。でも、長嶋さんはセンスがアーティストというか、やっぱり天才なんですね。ジャンルを超えて良いものの波動をこともなげにキャッチされる。結果的に「未来のために」はオリコンで1位を獲ったわけですから。
