level 11
列車の中は、国民服やモンペ姿の人達で混み合っていた。
立ったままで座席に寄りかかっている者がある。通路に荷物を置いてそれに腰を下している者もいる 。
暑い。すでに西陽の時刻でもあった 。
二人掛けの座席はいたるところで三人掛けになり、窮屈そうに身を寄せ合った乗客が、はれない顔付きで扇子や団扇を使っている。
網棚の荷物をしきりに気にしている老婆は耳が遠いらしく、隣の男に、この次はどこの駅かと大きな声でたずねていた。
2021年03月19日 10点03分