「もしあなたが海の底にいて、どうしようもなく苦しくて溺れそうになっていたら、わたしも海の底へ行き、ゆっくり、ゆっくり、陽の光のほうへあなたを連れていく」


描き続けた物語を光で浄化するように、yucatは『ローレライ~消滅海底都市』を歌いだした。舞うように優雅に歌い踊るyucat。新たな輝きを身にまとったローレライ(yucat)は、新しい世界へ観客たちを招き入れた。躍動的な彼女の背景でゆったりと泳ぐ魚たちとのコントラストが、とても美しかった




「今回は、シンプルに音楽と動く魚たちを観てもらいたくて、海底でライブをしたいなという思いつきから新江ノ島水族館へ辿り着き、こういうライブをしました」。他にもMCを通し、ヴィクトリアンスチームパンクローレライというテーマで制作したh.NAOTOの衣装を身にまといステージングをしていたこともyucatは伝えてきた
深海の宴も終盤へ。この日は、映画「9〜ナイン〜」のテーマ曲『Nine』を初披露。ボクシングを題材にした映画のテーマ曲という理由もあるのか、yucatは激昂した感情を麗しい楽曲の中へ直情的にぶつけていた。乾いた心を潤そうと雄々しく叫ぶように歌うyucat。楽曲自体は美しくも重厚麗美なシンフォニックスタイル。でも、その歌声にはマグマにも似た熱した叫びを投影していた。
一つとして同じ景色を映し出すことのない水槽というパノラマ画。その海の中で華麗に泳ぐ魚たちと心をシンクロするよう、最後にyucatは『Fairy Story』を届けてくれた。場内から沸きだした大きな手拍子を打つ手は、何時しか尾ひれとなり、yucatとともに巨大な水槽の中へ飛び込んでいった。『Fairy Story』に身を預け、場内中の人たちが大きな魚の群れとなり、水族館という海の中で自由に心踊らせていた。
その歌は、心を解き放つ力を持っている。何時しか僕らは大きな音の海の中、笑顔で力強く泳いでいた。それ以外、もちろん何もいらないよ。


止まないアンコールの声を受け、ふたたびyucatが巨大な水槽の前へ姿を現した。最後は、新たな旅路へ連れだすように『脳内トラベル』を披露。輝きをまとったその楽曲は、気持ちをうきうきとスキップさせる。yucatも客席を練り歩き、希望に満ちた想いを解き放つように歌っていた。誰もが晴れた心模様のもと、素敵な歌の遊覧飛行を楽しんでいた。最後に生まれた掛け合いが、場内にナチュラルな反響音を響かせ広がったのも印象的な風景だった。


日常を忘れ、魚たちと一緒に海の中で音楽と戯れた今回のライブ。次は、8月4日と5日に新たなストーリーライブを行うとyucatは伝えてくれた。海底都市から抜け出したyucatが、次にどんな世界へ飛び込み、いかなる物語を描きだすのか。また新たな楽しみが増えたのが、素直に嬉しいじゃない。