level 12
寺山 『とんがり帽子のアトリエ』第2巻の校了、お疲れさまでした。今回はミニ画集付きの特装版も同時発売なので、第1巻よりやることが多くて大変だったと思います。
白浜 いえいえ! デザインも可愛くしていただいて嬉しいです。
寺山 あとは8月23日(水)に発売されるのを待つばかりですね。
第1巻を発売したあと、読者の方々や書店さんから「絵がすごい!」という声が多く届いたので、そういった皆さんの期待に応えられるのではと思っています。ミニ画集には連載前の打ち合わせで、いちばん初めに私が見せていただいたイメージイラストなども入っていて……懐かしいですね。
白浜 そうですね。当初の設定の中には連載開始後とは異なるものもあるので、それも楽しんでもらえると嬉しいです。
寺山 主人公の少女ココが魔法使いに憧れていて、彼女が魔法使いを目指すことになるという物語の骨組みは、いまと同じですね。「『普通の人は魔法使いになることができない』と言われているが、本当は誰でもなることができる」という設定も、最初のころからありました。一緒に魔法を学ぶ級友として、元気印のテティア、物静かなリチェ、ココに反発する努力家のアガットがいるのも、現在とほぼ同じです。変わったところは、ココが魔法を学ぶ場所が、魔法学校からアトリエに変わったところと、先生であるキーフリーの設定くらいかもしれないですね。
白浜 キーフリーは変わりましたね。
寺山 連載では、どこか陰のある人物として描かれていますが……もともとどんな設定だったのかは、特装版でのお楽しみということで。
さて、初めて白浜さんとお会いした2年前に『とんがり帽子のアトリエ』の構想を聞かせていただいたのが、この連載のスタートでしたね。どのくらい前から本作の構想はあったのですか?
白浜 6〜7年前くらいでしょうか。イラストを描いている友人たちと話しているときに、「絵が生まれていく過程って魔法みたいだよね」という話になって、その流れで「魔法陣(魔術で用いられる紋様や文字で構成された図のこと)を仕事として描く人たちの物語を描けないか」と思い付いたのがきっかけです。そこから魔法陣の設定などを考え始めました。
寺山 ということは、前作の『エニデヴィ』(天使のエニエルと悪魔のデヴィエラが、世界を巻き込む喧嘩を繰り広げるコメディ作品。全3巻)を描く前から構想だけはあったんですね。
白浜 そうですね。もともと、ファンタジーも描いてみたかったんです。
寺山 ファンタジーでありながら、本作は「魔法使い」を「仕事」として捉えている点が、構想をお聞きしたときから興味深かったです。この点についても、かなり意識して描かれていますよね。
白浜 イラストや漫画のような、いわゆるクリエイティブな仕事って、「一部の才能ある人がやるもの」という世間のイメージが強いのが、以前から気になっていて。やりたいと思うなら、「そもそもできない」ではなく「どう挑むか」を考えてみてもいいんじゃないかと思うんです。
寺山 魔法も「できない」じゃなく、「どう挑むか」だと……。
白浜 そうですね。小中学生が何か夢を抱いたときに、そっと背中を押してあげられるような漫画を目指して描いています。
寺山 白浜さんご自身は、いつ頃から漫画家という仕事を意識していたのですか? 東京藝術大学に入学される前ですか?
白浜 入学してからですね。在学中に漫画家の人と知り合いになって、それまでは「漫画家ってなるのが大変そう」と思っていたのですが、近くに実際になっている人がいると「もしかしたらなれるかも」という気になってきて。
寺山 まさに、「そもそもなれない」から解放されたわけですね。
白浜 あの出会いがなかったら漫画家になるなんて、考えてなかったかもしれませんね。
描きたいものがどんどん増えていく
寺山 現在は漫画だけでなく、アメコミのカバーも描かれていますよね。たしか、最初はご自分でアメリカまで持ち込みに行かれたんですよね?
白浜 はい。ニューヨークで開催されている「コミコン」(アメリカ東海岸で最大のポップカルチャーイベント)のブースに、描いたイラストを持って行きました。それで先方から仕事をもらえるようになって、いまでは月に数冊程度のカバーイラストを描かせてもらってます。
寺山 その行動力はすごいなと思いますね。
白浜 日本の漫画も好きだったんですが、アメコミやバンド・デシネ(フランス語圏の漫画)も好きだったので、いつかはそこで仕事をしたいと思っていて。
寺山 これも「どう挑むか」を考えたうえでの行動だったわけですね。そう考えると、『とんがり帽子のアトリエ』で白浜さんが描かれていることって、ご自身の経験も活きているように

